全国町村会

情報の電子化

東洋大学国際学部国際地域学科教授 沼尾 波子 (第3045号・平成30年7月2日)

最近、審議会等で使用される資料が、紙媒体から電子データに切り替わりつつある。ペーパーレスが掲げられ、会議当日の説明でも、タブレット端末を利用した電子ファイルの閲覧方式が徐々に導入されるようになってきた。今や八割以上の人々がPCやスマートフォン等の端末からインターネットを利用する時代であり、今後、情報の電子化は一層進展するだろう。

確かに、電子データであれば、保管場所を必要とせず、また検索機能を活用すれば、必要な情報を取り出しやすい。だが、その半面で、電子データには課題もある。まず、情報機器とそれを起動する電源がなくては、一連の情報にアクセスできないことだ。これは当たり前ではあるが、つまるところ、情報を利活用するうえで、機器やソフトの維持更新費用が恒常的にかかることを意味する。また、セキュリティを含め、システムの維持管理にはIT技術に長けた人材が必要だ。たとえ自分たち地域の情報であっても、これにアクセスし、主体的・積極的に利活用するには、ITに長けた人材の確保が必要ということである。災害等の非常時の電源確保も考えておかなければならない。

第二に、PCやスマホ等の機器から取り出す情報は、積極的に見にいかない限り、我々の目に触れない。これは、電子データが紙媒体等と決定的に異なる点である。目の前にある書籍や資料の束は、パラパラとめくれば、好むと好まざるとに関わらず、その全体像を目にすることができる。しかしながら、電子情報の場合には、資料のありかを特定し、キーワード検索をかけて掘り出すこととなる。適切なキーワードを特定できなければ、必要な情報にたどり着けない場合もある。また画面には資料の全体像は映らず、断片的な情報だけが目に入る。

このように電子情報は、自らが意識して情報を探しに行く場合には便利なことこの上ない。だが、キーワードを特定できない人や、そこまで主体的に情報にアクセスする意思のない多くの人々に何かを伝えようとすれば、別の手段が必要だろう。行政のホームページに漫然とアクセスする住民がいるだろうか。そう考えると、住民への情報提供は、必要情報を積極的に探す人への対応と、幅広い情報が人々の目に触れるための対応の両面が必要であることが見えてくる。ホームページや広報誌に掲載しておけば情報公開は終わりという話ではない。検索者のために、曖昧なキーワードでもアクセスできる環境を整備するとともに、情報が、それを必要とする人々の目に触れ、耳に入るよう、適切な手段と方法を選択することが大切である。

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