全国町村会

まちづくり 全員参加の呪縛を解く

作新学院大学名誉教授・とちぎ協働デザインリーグ理事 橋立 達夫
(第3047号・平成30年7月16日)

「まちづくり」とは、「住民一人一人が前向きに生きる条件をつくること」と私は考えている。

地域の方々には、それぞれの生活があり、まるで煙のブラウン運動のように、日々いろいろな方向を向いて活動している。前を向いたり後ろを向いたり、時には止まり、また時には衝突をしたりもしながら。

こういったところで、まちづくり活動を呼びかけても、賛成者はせいぜい3割で、1割は何を言ってもほぼ反対、あとの6割は無関心、というのが世の常である。まちづくりのリーダーたちは、この反対者の説得や、無関心層を巻き込もうとすることに大変なエネルギーを使ってきた。そこで疲れてしまって、もう積極的な方向に対する活動の余力が残らない。これでは、まちづくりは始まらない。

従来、まちづくりは、何となくみんなでやるものだと考えられてきたが、この全員参加の共同作業という呪縛を解いたらどうか。気がついた人が、できることを、できる時に、できる範囲でやれば地域は変わっていく。何人かが、前向きに、地域をよくする、もっと暮らしやすくするという思いを抱き、その思いを活動に移すことにより、その分だけ地域は変わる。まちづくりはこうした人たちの活動の総和として現れるのである。人口の1%が前向きに活動したら、地域で何か始まったということが外から見えるようになる。1割が動いたら、もう地域ぐるみで動いているように見える。こうやって動き始めた人が周りの人に影響を及ぼし、少しずつ活動の輪が広がっていくという展開を考えたい。

こういうことを言うと、地域のまちづくりのリーダーたちは大層安心をして下さる。今までどうやって無関心層を巻き込もうかということに汲々としていた方が、これで安心して新しい一歩を踏み出せると言って下さるのである。

皆で同じことをする「共同のまちづくり」より、個々の人の技能や感性が生きる「協働のまちづくり」の方が、活動が楽しくなる。そしてプロの技を持ち寄り活かす素地ができる。こうなれば、まちづくりのエンジンは大幅にパワーアップする。

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